Day28「名もなき詩」
「韻を踏む」なんて、中学生のときは気にもとめたことがなかった。
韻、を初めて実感させてくれたのは、『名もなき詩』だった。
ある日父が、この曲を聴きながら言った。
「櫻井さんは韻を踏むのが上手だね」
どういう意味?と聞いた私に、父はこのフレーズを口ずさんだ。
『君が僕を疑っているのなら
この喉を切ってくれてやる
Oh darlin 僕はノータリン
大切な物をあげる』
「ダーリンとノータリンが韻を踏んでるやろ?」
それからミスチルの曲を聞くたびに「ここ韻踏んでる」と
櫻井さんの見事な言葉選びに脱帽することも秘かな楽しみになっている。
***
「名もなき詩」の好きな点はまだある。
その中の一つが、当時思春期で友人関係に悩んでいた私の心を救った歌詞だ。
『どれほど分かり合える同志でも
孤独な夜はやってくるんだよ
Oh darlin このわだかまり
きっと消せはしないだろう』
仲がいいと思っている人に囲まれているのに
ふと、突然、自分だけが輪の中に入れていない気がする。
急に客観的にその様子を眺める自分がいて、ひどく孤独を感じる。
そんな風に感じるのは私だけだと思っていた。
だから、誰にでもあることなんだと安心することができた。
(櫻井さんが、そういう意味でこの歌詞を書いたつもりはなくても
一人の少女を救ったのは事実である)
***
『名もなき詩』は
本気で壁にぶつかったり
本気で自分を見失ったり
本気で足を踏み外したり
本気で落ち込んだり
そういう感情のときにこそ聴きたい曲である。
なぜなら、「僕だってそうなんだ」と共感してくれる歌詞だから。
『だけど あるがままの心で
生きようと願うから
人はまた傷ついてゆく
知らぬ間に築いてた
自分らしさの檻の中で
もがいてるなら誰だってそう
僕だってそうなんだ』
誰だって根拠もなく不安で情緒不安定になることはある。
心が弱っているとき、誰かに相談できなければ
『名もなき詩』を聴いてほしい。
2021/01/30
※YouTubeのofficialチャンネルには二つのライブ映像が配信されている。
お好きな方を聴いてみてほしい。
*"HOME" TOUR 2007 ~in the field~ Release Date:2008.08.06
*Dome Tour 2019 “Against All GRAVITY” Release Date:2019.12.25